SynBioポータル

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バックナンバー2024年3月

麹菌の合成生物学ツールキット
全体に公開・
 
ニホンコウジカビ (Aspergillus oryzae) は、真菌類であるコウジカビ属の有性生殖をしない不完全菌です。麹菌の一つとして、醤油、味噌、日本酒、焼酎などを作るために使われており、2006年の日本醸造学会大会では日本の「国菌(national fungus)」とされました。デンプン分解やタンパク質分解に優れており、ニホンコウジカビが作るデンプン分解酵素・ジアスターゼ(アミラーゼの別名)は、高峰譲吉が医薬品タカジアスターゼとしたことでも知られています。 真菌を使った食品の生産は、大きな商業的な可能性を秘めた分野であり、現在、ヨーロッパ、米国、アジアで入手できる真菌を使った肉や乳製品の代替品の数が増えています。そのようなことから、このような真菌を扱うための合成生物学的なツールの重要性が高まっています。セルラーゼを大量に生産するために、バイオマス完全分解といった工業的に利用されてきた真菌Trichoderma reeseiは、そのようなツールが開発され、卵白および乳タンパク質の生産が可能になっているそうです。ところが、このような工業用の真菌は食品としての歴史がないため、様々な課題があります。そこで、注目されるのが、ニホンコウジカビ (A. oryzae)です。
 
 

by 山形方人(Masahito Yamagata)